ノーリフティングケアの基本研修を実施しました
去る7月21日に、当社ノーリフティングケアチームを対象とした基本研修を実施いたしました。
その際の研修レポートをご紹介いたします。
実施日時:2023年7月21日(金) 09:00~17:00
実施場所:ピースクルーズ本社9階研修室
参加者:ノーリフティングケアチーム(取締役・介護福祉士4名・理学療法士・看護師)
Ⅰ.研修概要
1.ノーリフティングケアの必要性と目的
・ノーリフティングケアは、「持ち上げない・抱え上げない・引きずらない」ケアのことをいう。
身体の間違った使い方を無くし、福祉用具を有効活用して、介護者・被介護者双方の健康的な生活を保障するケアを実践できる職場づくりが目的である。
・現場を変えるためには、管理者のみならず、職員一人一人が「働き方を変える」意識をもつことが重要である。
また、この意識をもつことができるように伝え、実際に働き方を変えるための方法を教育していく組織体制を整えることが大切である。
・福祉用具を使用したケアでは、人力でのケアよりも時間がかかることはある。
しかし、人力に比べると身体的負担は小さくなるため、利用者様をよく観察できたり、コミュニケーションの時間を増やしたりできるなど、余裕をもって対応することもできると考えられる。
「時間がかかるから福祉用具を使わない」というのは間違いであり、プロのすることではないといえる。
・人の手のケアのほうが機械よりもやさしいと思われがちではある。
しかし、人の手による介助も、力任せになってしまってはやさしいものではなくなり、逆に利用者様の廃用性や二次障害を引き起こしてしまう恐れがある。
適切に機械を使うことができれば、むしろそちらの方がやさしいケアにつながるのである。
・福祉用具を用いたケアは、機械任せのものばかりではない。そのため、各利用者様に応じて適切に用具を選定・使用することで、自立を阻害することなく、逆に促進させることができる。
このことから、人の手によるケアこそ自立支援につながり、福祉用具を用いたケアが自立を阻害するという考え方は、適切ではないことになる。
2-1.専門職としての意識・態度
ノーリフティングケアの実践は組織で取り組まなければならない。
そのためには、職員1人1人の「働き方を変える」という意識が必要となる。
プロとして、自身の身体を守るという意識での自己管理が重要となる。
そのためには、
・食生活に気をつける
・しっかりと睡眠、休養をとる
・柔軟性を高め、筋力をつける
・仕事の開始時、合間、終了時などにストレッチを行うなどして、身体への急激な負担を減らす
以上の4点に留意する。
・また、動きやすい服装を選ぶことも重要となる。
最近は暮らしのイメージを大切にする観点から、制服に限らず私服でケアを行うところも増えているようである。
・職場で腰痛検診や腰痛健康調査が「行われている場合には、組織の一員として受けるようにする。
また、少しでも違和感がある場合にはすぐ報告するなど、一人一人が意識することで、腰痛ゼロを目指す。
2―2.身体の使い方
・身体の使い方によって、腰痛予防はできずとも腰痛のリスクを減らすことはできる。
中腰のような、支持基底面(立位での両足を円で囲んだ範囲)から体の一部がはみ出す不良姿勢になると、身体の重心がズレ、バランスを取るために筋肉がこわばってストレスがかかる。この繰り返しが痛みにつながるのである。
・不良姿勢にならない作業姿勢を取るということは、支持基底面からはみ出さない姿勢を取るということになる。
そのためには、足を作業する方向に広げることで、支持基底面を広げるという手段がある。
また、ねじり・ひねりの動きも身体の負担となる為、指先・鼻・へそ・足先の向きを合わせるよう心がけることが、負担軽減につながる。
・身体を動かす際は、体重移動を行なうことで、一部にかかる負担を防ぐことが出来る。
また、中腰などの負担のかかる姿勢を取る際には、手や膝をつくことも有効である。
3.リスクマネジメント
・リスクマネジメントとは、職場にある様々な危険(リスク)の芽を洗い出し、発生しうる腰痛・ケガ・事故のリスクの大きさを見積もり(アセスメント)、危険度や影響度が大きいものから優先的に対策し、職場の安全性を高めていく手法のことである。
これを実践するためには、職員全員でヒヤリハットを含め、課題と感じることを挙げていくことが求められる。
・ケアプランを作成する際は、職員全体で挙げた課題を基に、職員の身体的負担を取り除き、利用者様に合った福祉用具や方法を導入したプランを立案することが必要となる。
当然だが、立案したケアプランはいわば契約書であるため、これに従ったケアを行わなければならない。
4.福祉用具を使用したケア
福祉用具を使用したケアとしては、以下のようなものがある。
・ベッド上での移動を行うスライディングシート及びスライディンググローブ、移乗の際に使用するスライディングボードといった、機械ではないもの。
・移乗の際に利用者様を吊り上げる形で行う際に使用するリフト、利用者様が起立姿勢をとった状態で移動できるスタンディングリフトといった、機械のもの。
・どの福祉用具に関しても、ただ使えばいいというものではない。あくまでも自立支援を前提としたケアである必要があるため、対象の利用者様の身体状況に合わせた用具を使用することが重要である。
Ⅱ.研修を受けての感想
今回の研修内容は、ノーリフティングケアを行うための基礎的な知識を得られるものであったと思う。
上記Ⅰ-1に関しては第1回のマネジメント研修でもご教授いただいたものであるためある程度は把握していたが、ノーリフティングケアを行うにあたっての根幹部分であるため、今回の研修で再確認できたことは大変ありがたいものであった。
これを理解していなければ、ノーリフティングケアを導入しても形骸化したものになってしまうだろう。
もっとも、今後、どのようにして職員全員に伝え、理解していただくかは大きな課題ではあるが。
また、身体の使い方や、福祉用具の種類及び使用方法を一通りお教えいただき、体験できたことも大きな収穫であった。
知識だけで対応していたら間違いなくミスを起こしていただろうし、体験しなければ利用者様の感じ方を知らないまま行ってしまうために、職員本位のケアにもなりかねない。
体験するというプロセスを挟むだけでも、かなり違うのではないかと考えられる。
身体の使い方についても、今まではいわゆるボディメカニクスに則った使い方を行っていたが、今回もう一歩次の段階に進んだような使用法を教えていただいた際には、驚きとともになるほどと感じた。ただ、今までの動きに慣れてしまっているため、変えていくまでが大変と思うし、これを正しく伝えなければならない難しさも感じているところではある。
(作成者:介護福祉士 柏原庸平)