第1回 ノーリフティングケアマネジメント研修を実施いたしました
ピースクルーズで現在推進中の「ノーリフティングの取り組み」に関連し、弊社ノーリフティングケアチームを対象に、研修を実施いたしました。
その際の研修レポートをご紹介いたします。
実施日時:2023年6月21日 18:00~21:00
実施場所:ピースクルーズ本社9階研修室
参加者:ノーリフティングケアチーム(取締役・介護福祉士5名・理学療法士・看護師)
Ⅰ.研修概要
1.ノーリフティングケアの目的と必要性
・まず、ノーリフティングケアとは何かのおさらいから始める。
ノーリフティングケアとは、持ち上げない、抱え上げない介護技術ではなく、現場の腰痛を取り除く取り組みを指す。これは、ケア現場だけでなく、それ以外のあらゆる作業を見直し、職員全員が安全に働くための取り組みである。
・福祉用具の「使用」が目的ではなく、対象の利用者様に応じて福祉用具を「活用」し、介護者と利用者様の双方の身体が安全で、働きやすく、かつ有効的なケアを行うことが目的となる。この結果、利用者様の褥瘡や拘縮といった二次被害を防止しつつ、健康を守ることにもつながると考えられている。
この目的を達成するためには、
・身体の負担がかかる業務の見直し
・ノーリフティングケアの実践
・安全性確保のための、リスクマネジメントを実践する体制づくり
・職員1人1人の意識改革
以上の4点が必要な要素となる。
・腰痛の観点からみると、製造業や接客業などのような業界では腰痛発生率は減少・横這いの傾向があるものの、医療・介護のような保健衛生業での腰痛発生率は増加傾向にある。職員を守る意味でも、ノーリフティングケアの導入・普及の取り組みは積極的に進める必要があるだろう。
・また、厚生労働省の定める「新腰痛予防対策指針」によると、腰部に著しく負担がかかる介助においては、原則人力での抱え上げは行わせないことが求められている。また、抱え上げざるをえない場合には、適切な姿勢で、身長差の少ない2名以上で行うことが求められる。
→「行わない」ではなく「行わせない」ことが求められている。このことからも、安全に働ける管理体制を整えることが必要となっている。
・「SAFEコンソーシアム」
近年、転倒や腰痛などのような労働災害が増加している。背景として、人手不足・働き方の多様化・顧客第一文化・従業員への安全配慮欠如など、様々な問題があると考えられている。既存の取り組みではこれらの災害の減少は難しいことから、労働者だけでなく、家族・事業者・地域全体の人々の幸せにつながるための社会問題としてとらえ、顧客を含めたステークホルダー全員の解決策を考え、取り組んでいくための活動体を「SAFEコンソーシアム」と呼ぶ。
2.ノーリフティングケア実践のための体制づくり
・ノーリフティングケアの取り組みには、2つのPDCAサイクル(計画・実施・評価・改善)が必要となる。
①体制づくりにおけるPDCAサイクル
②リスクマネジメントにおけるPDCAサイクル
①②を実行するために委員会の立ち上げ、役割を選定する。この役割は5つあり、統括マネージャー・健康管理・アセスメント及びプランニング・教育・福祉用具管理に分けられる。委員会メンバー全員がこの役割について理解しておく必要がある。
・上記の活動を始めるにあたり、経営者から施設・事業所全体に「ノーリフティング宣言」を行い、取組開始とその目的を全職員に共有する。その際、ノーリフティングは労働安全の取り組みであり、職員と対象の利用者様を守る観点から、管理者自らが抱え上げ等のケアや業務を行わせてはならないことを理解して取り組む必要がある。
・宣言後は、業務改善を進めるために目標や課題を見える形にする。理想となる目標と現状を比較して課題を明確化し、体制を整えるための計画を立案・実施していくことになる。この計画実施をPDCAサイクルで行い、体制を構築していくこととなる。
3.腰痛調査分析
・「1.ノーリフティングケアの目的と必要性」に記したように、ノーリフティングケアの取り組みとして、現場から腰痛を無くすというものがある。これを実施するためには、まず、現状の腰痛度合いについて理解が必要となる。
この理解が取り組みを始める際の1つの指標となるため、ただ定期的な調査を行うのではなく、職員全体に状況を共有することが重要となる。
また、定期的な調査によって集積される、痛みの有無やレベルのデータを分析し、腰痛予防の対応策を検討していくことも必要となる。
4.福祉用具の管理
・福祉用具の管理について、まずは現状の把握から始めることになる。どんな種類の道具を所有し、どのような状態で使用・保管されているかを把握する。
・状況が把握できたら、アセスメントやプランニングの結果をもとに、どの現場にどの道具が適しているかを検討する。これによって、必要となる福祉用具を導入する流れを構築できる。
・福祉用具を導入できても、時間経過とともに用具の状態の劣化や、対象の利用者様に合わなくなってくるといった場合がある。このため、福祉用具自体の定期点検を行える体制を整えておくことも重要である。
5.今回の計画
・研修内容を踏まえ、第1回となる今回は、
目標:全職員がノーリフティングケアの必要性・目的・自己管理について理解している。
現状:ノーリフティング宣言実施済み。一部の職員がノーリフティングケアを導入している事業所を見学済み。
課題:ノーリフティングケアチームの、ノーリフティングケア導入に関する理解度を共有できていない。全職員への目的の説明・理解が十分になされていない。
計画:チーム全員が、ノーリフティングケア導入に関する理解を共有できているようにする。また、全職員がどの程度理解できているかを調査する。
以上の計画を立案し、次回の研修実施日(2023年7月27日)までに達成することを目標と定めた。各拠点にて、調査のための理解度チェックを実施している。
Ⅱ.研修を受けての感想
5月末にノーリフティングケアの宣言と説明会を実施して以降、ノーリフティングケア関係の活動といえば、2023年6月7日に行われた施設見学会ぐらいのものであった。そのため、ノーリフティングの理解に関しても、全職員向けの説明は宣言時だけでそれ以降は特に周知もなかったため、不十分な状態である。それ以外にも、腰痛予防のリスクマネジメントや調査などもほとんど行われていないなど、ノーリフティングケアの導入にはあまりにも整えられていない環境であることが浮き彫りとなった。
新規プロジェクトであることもあって、右も左も不明な手探り状態であるため、ある種やむを得ない部分もあったかもしれないが、導入する以上は早急に体制を整える必要がある。その手段等のプロセスを知ることができた今回の研修は非常に重要なものであったといえるだろう。プロジェクトも始まったところであるため、どうなるかまだ未知数であるが、何かしらの成果につながると信じ、進めていければと感じる次第である。
(作成者:介護福祉士 柏原庸平)