ノーリフティングの取り組み
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去る9月22日に、当社ノーリフティングケアチームを対象とした基本研修を実施いたしました。
その際の研修レポートをご紹介いたします。

 

実施日時:2023年9月22日(金) 18:00~20:00

実施場所:ピースクルーズ本社9階研修室

参加者:ノーリフティングケアチーム(介護福祉士5名・理学療法士・看護師)

 

Ⅰ.研修概要

 

 

1.健康管理の体制づくり

・健康管理の体制を整えるうえで、必要な取り組みとしては、以下のものがある。

①年間の腰痛調査実施の日程を決める。

②調査結果を管理表に記録する。

③痛みの強い高リスク者への対応策や、腰痛予備軍への腰痛低減策を決定する。

④健康管理マニュアルを作成する。

 

①について、もし調査が未実施の場合には、職員にかかる負担を考慮して簡単な内容から調査を行っていく。
すでに実施済みである場合には、定期的に調査を実施できるよう年間スケジュールを決定していくことになる。

②では、①の調査によって得られた結果を管理表に記録していくこととなる。
この表では、職員全体から得た腰痛や疲労の結果とともに、それに対する対応策も記載する。
また、職員全体から得た結果の表とは別に、個々人ごとの腰痛状況とこれに対する対応策を記載した表も作成しておくと、より具体的なデータを収集・管理することができ、類似事例への応用も可能となる。

なお、職員全体から得た結果ついては、調査結果は職員間で共有しておく必要がある。
これによって、現状や過去と比較しての変化を把握でき、腰痛への危機感を持たせることや、腰痛者が減った場合などにおける業務のモチベーション維持に効果が期待できる。

③における「高リスク者」には、痛みがあれば頻度がどれほどであっても該当し、対応策を決定する優先度も高くなる。
対策としては、個別面談を通して業務方法を見直したり、痛みの原因を明確化するために受診を勧めたりといった方法がある。
これと同時に、労災申請等の説明も行うと良い。

痛みがない場合は「腰痛予備軍」に分類される。
現在は痛みがないとしても、いつ腰痛が発生するかはわからないため、発生率を低減する策は考えておきたい。
筋トレやストレッチのような、業務内で行える予防対策を実施したり、服装や業務環境の改善を検討したりといった、全職員が取り組める内容を対応策とすることが望ましい。

①~③までをPDCAサイクルに則って実施し、最終的には④でマニュアルとして作成し、周知することとなる。
このとき、対策の内容だけでなく、対策の実施状況や、職員が方法を守っているかの確認が重要となる。
また、職員への教育の進捗状況も確認しておくと、健康管理体制の見直しの役に立つ。

 

2.福祉用具の導入・管理の体制作り

・ノーリフティングケアを実施するにあたり、必要に応じて福祉用具を導入していくこととなる。
これに対応するために、あらかじめ福祉用具の導入・管理に関する体制を整えておく必要がある。

導入・管理の体制づくりにおいて必要な要素は、以下の3点である。

・現在ある福祉用具について把握する。

・福祉用具の管理方法を決め、適宜点検を行う。

・必要な福祉用具の導入計画を立てる。

 

・①については、現場にある福祉用具が、どこに保管され、どのような状態にあり、誰が使用しているか等を管理し、配置場所も検討する。
また、これらのデータを一覧表にして作成しておくと、管理しやすくなる。

・②については、管理するうえでの注意点や点検項目を決め、定期的な確認を行う。
もし点検する際に問題が生じた場合には、使用中止や使用時の注意点などを共有する方法も検討する。
これにより、使用に際しての事故防止にもつなげることが出来る。

また、管理方法については、どこに物品を置けば効率よく使用できるか、どこに機器を配置するかを決定しておくことになる。
こうすると、物品・機器類の管理がしやすくなり、万一の紛失等の問題をなくすことが期待できる。

・③に関しては、アセスメント・プランニングで立案された、今後理想とするケアの方法をもとに、高リスクの利用者から順に見直し・導入計画の立案を行う。
これを実施するにあたっては、ケアマネジャーとノーリフティングケアについての共有が必要となる。

共有ができれば、ノーリフティングケアを念頭にした「理想的なケア」を策定でき、何がどれだけ必要なのかを「現行のケア」と比較しながら抽出していくことが可能となる。
抽出さえできれば、あとは優先順位が高い順に導入していくことになる。

 

・以上の要素をもって福祉用具を導入する流れを作り、マニュアルとしてまとめておく。
これにより、今後の福祉用具の導入方法や職員への周知の方法を確立でき、導入するプロセスの見直し等が容易となる。

なお、福祉用具を導入する際、実際に現場に導入する前に、職員にデモ体験を行っておくことも重要である。
使用方法の周知などの教育はもちろんの事だが、導入予定の福祉用具が現場環境や利用者様に適しているかを確認する意味でも、ほぼ必須となるだろう。

 

Ⅱ.研修を終えての感想

 

研修もいよいよ終盤に差し掛かろうというところまできた。
そのため、今回の内容は、今までの研修内容の各項目について進めていくような形となった。

健康管理については、腰痛調査や腰痛リスクのある業務等のデータをとり、表にするところまではある程度実施してきたが、具体的な対応策の検討・実施については各拠点によって進み具合がかなり異なっている。
日々の業務も併せて行っているため、なかなか委員会として検討を重ねたり、できるところから周知・実施したりということが困難な状況ではある。
しかし、こうしている間にも腰痛発生のリスクは高まっていると考えられる為、可能な限り早急に進めていき、マニュアル作成までこぎつけたいところである。

福祉用具の管理に関しては、以前までの研修で一覧表の作成まではできていたため、今回の研修から、福祉用具の現状を把握した後の部分を進めていくこととなった。
ベッドなどは、普段の業務で使用しているためある程度問題ないだろう。
だが、スライディングシートやグローブなどの福祉用具はほぼ使っていないし、触れる機会も現場では乏しかったため、まずは使用法周知の研修や実践を通じて各職員に慣れてもらう必要があるだろう。

ケアマネジャーと連携してのプラン作成については、内部の連携はまだスムーズに行えそうだが、問題は外部の事業所との連携である。
ノーリフティングケアの視点についての理解を得るところから始まり、それを経てからプランの見直しとなるため、相応の時間を要することになる。

利用者様・介護者の双方にメリットのあるケア方法であるため、なんとかご理解をいただき、ご協力を賜りたいところである。

 

(作成者:介護福祉士 柏原庸平)