「訪問看護は必要ないのですか?」― Ⅰ
看護師の仕事は何だと思いますか?
保助看法(保健師助産師看護師法昭和23年7月30日公布)により「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話、または診療の補助を行うことを生業とする者」とあります。
- 病気の方、傷を負った方の療養上の世話
- 褥婦(出産後間もない女性のこと)の療養上の世話
- 診療の補助(医師の補助)
昭和23年に公布され時代も変化していますが基本的にはこの3つです。
看護師の責務は、健康増進、疾病予防、健康回復、苦痛緩和の4つです。
看護倫理の原則(道徳的判断)は、自律、誠実、善行、正義、忠誠の5つです。
難しいことと思われましたか?
全ての看護師はこの教育を受け、この法と、責務、原則に基づき仕事をしています。
難しい話にはなりましたが看護師って何?ということですね。
私は、新卒で看護師を目指したわけではなく、30歳を超えて准看護師からのスタートです。
50歳の時、第100回看護師国家試験を受け看護師となりました。
精神病棟、老人保健施設で10年ほど働いた経験があります。
そこで見た人間の最期を忘れることはできません。
老人保健施設では、そんな最期もあるかなという穏やかな最期の方もおられましたが、精神病棟で最期を迎えられた方は、こんな最期で良かったのだろうかと思うことの方が多かったです。
人生100年と言われますが、やはり誰しも安らかに晩年を送りたいのではないでしょうか。
痛いとか辛いとかいやですよね。私は痛がりなので、爪の先ほどの痛さも人生の晩年に受け入れることはできません。
思いっきり「いやだ―」叫ぶでしょう。
介護保険では訪問看護というサービスがあります。(医療保険も使えるなど詳しくはまた)
自論ですが、介護保険を利用するすべてのケアプランに訪問看護を入れるべきと考えます。
この考えは、変わりません。
介護保険を利用するからには、要支援1でも、なんらか、自分だけで生活ができず人手を借りなければならないということです。
そうでなければ、介護保険を使う必要がありません。
身体がしんどいから買い物をしてほしい、掃除をしてほしいなら、家政婦さんを頼めばいいのです。
介護保険は、介護が必要な、疾病があるということが前提です。
だから医師の意見書がいるのです。家政婦さんを頼むのに医師の意見書は必要ないでしょ。(あったらごめんなさい)
医師の意見書には、なぜ介護保険がこの人に必要かが書かれています。
身体的にせよ心の問題にせよです。
介護保険の花形はヘルパーさんと思いますが、ヘルパーさん一辺倒のケアプランて何だろうなと当初から思っていました。
看護師は、准看で2年間、看護師は少なくとも3年間は学びます。
実習はそれぞれ1年間病院の各科に行きます。
実習は、本当に厳しいのです。予習は必須ですし、病棟の朝の申し送りで「学生さん!今日の目的は?」などと病棟師長や学生担当看護師から質問されます。
モゴモゴしていると「帰りなさい」と言われることも珍しくありません。
私は、朝の申し送りで目まいがして倒れ、その時言われたのは、「健康管理も仕事のうちよ」という言葉です。
厳しい言葉でした。
でも、この程度は看護師を目指して実習に行った看護師は大なり小なり経験しているのではないでしょうか。
ヘルパー資格を取るのにどれくらいの期間がかかると思いますか?
最短一か月です。
以前は5日間の実習がありましたが、それもなくなりました。
施設2日訪問2日デイサービス1日が必須でした。
私はこれに夜勤も加えたいくらいでした。しかし、なくなりました。
いくら、ヘルパーさんが大量に必要だからと言っても、1か月の座学だけで現場に出すなんてなんて無謀だろうと思いますよ。
そして前職も様々です。
現場には、実務を積んで介護福祉士資格を取った人や現場で10年なんて言う人もいますが、みんな今日の仕事に大変で1か月の座学だけの未経験者を受け入れるのは大変です。
サービス提供責任者と言われる人がその役目になるわけですが、高齢者を見たこともない人に教えるのですから。
現状そんな状況なのです。
では、利用者の立場に立って考えるとちょっと不安ではありませんか?
もちろん先輩が同行したり、独り立ちできるまで見守りますけど。
それと、主婦経験や子育て親の介護をしたという方も多くおられます。
しかし、医療の目はお持ちですか?と思うのです。
医師の意見書を読み解くことができますか?
家事援助でご飯を作りに行くけれどその利用者がどうして介護保険を利用しているか理解できていますか?
必ず、何か疾病があるのです。
脳梗塞で片麻痺の方を介護に行くとき、その脳梗塞は何の疾病によって引き起こされたのでしょう?
糖尿病でしょうか。
よく、先輩看護師言われた言葉があります「正常がわからないと異常がわからない」と。
週1回でも訪問看護師が健康管理を行い、日頃の生活状況知っているといつもと違うなと感じるとき日常を知っている訪問看護師がいたら対応は早いはずです。
担当医師に尋ねるのはもちろん大事ですが、看護師は医師の診察補助者でもあるわけですから医師と意思疎通することに慣れています。
医師にとって必要な情報を的確に伝えることができます。
私は、やはり訪問介護+訪問看護この2つではじめて介護の目と医療の目が利用者の方に向けられるのだと考えます。
一つでは片手落ちです。
どっちが偉いとか偉くないとかという問題ではなく専門性の違いです。
在宅ケアはこの二つのサービスがあって成り立つと思います。
訪問看護を始めた当初、介護保険課でも、地域の医師でも、ケアマネ―ジャーでも理解いただけない方が多くおられました。
「看護はうちの看護師がいるから要らない。自分は認定委員だ。」と怒鳴りこまれた開業医さんもおられました。
歩み寄る余地もなしです。私の説明が足らなかったのでしょう。
しかし、ケアプランには、必ずその利用者の方に応じた訪問看護サービスを入れるべき、この私の「訪問看護必須論」はいまだ揺らぎません。
次回は、訪問看護の実際をお話しします。きっと必要であることを理解いただけるでしょう。